2020年12月に新聞で「人工物が地球の生物の質量を超えた」という小さな記事を見た時、ひっくり返った。人が作った物が、自然物を超えた・・・。
この小さな記事では、何もわからず、そこからずっとノートを取り続けている。
その記事は、2020年12月19日付けの『Nature』に掲載された記事の抄録だった。
内容は、人由来の人為起源物質が地球上の生物総重量である1兆1000億トンを超えるというもの。
Nature記事はこちら。
人為起源物質とは
人が製造・生産したコンクリートの道路、橋、高層ビル、ダム、飛行機、電車、、ペットボトルや衣服やコンピューター、スマフォ、、身の回りにあるもの全部。
地球の生物総重量を超える
・20世紀初頭には、人為起源物質は生物量の3%にしか過ぎなかったが、その120年後に同量になった。
・現在でも増え続け、今、全人類が1週間で自分の体重と同じ重量の人為起源物質を生産している。
・現在地球上にいる動物の総重量は40億トン。プラスティックは80億トン。
・増加しているのは「廃棄のゴミ総量」→ 一度生産すると目の前から消えても、地球上からは消えないゴミ重量。
・現在、人間と家畜の総重量は野生動物の2倍となっている。
・人が食料を生産(農耕)開始する一万2000年前までは、植物は今の2倍の重量と言われている。農地開拓や住居の建築により、森の伐採のために半減。
2兆トン→現在:1兆トン
・人口増加・・18世紀まで全地球人口5億人。現在、80億4500万人。
人新世(The Anthropocene)の提唱が起こる
人新世とは、人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える発端を起点として提案された想定上の地質時代を指します。
2000年に、オランダ人大気化学学者でオゾンホールの研究の業績で1995年度ノーベル化学賞を受賞したPaul Crutzenが提唱しました。
海洋政策研究所のHPの記事(2023.05.05発行:別府湾の海底堆積物に記録された人新世境界)によると、
・・・別府湾堆積物には人新世の始まりを明確に特徴づける証拠があり、
海底下64cmの1953年の地層を境に、人為影響の痕跡とみられるさまざまな指標が顕著な変化を示している。プルトニウムやウラン、セシウム等の核実験由来の放射性同位体、化石燃料の燃焼由来物質である球状微粒炭、鉛や水銀等の重金属、PCBやDDT等の残留性有機化合物、マイクロプラスチックなど、人為的な環境汚染の痕跡がこの頃から初めて検出される。化石燃料燃焼由来の二酸化炭素濃度の増加を反映する炭素同位体比の減少や、窒素酸化物(NOx)や窒素肥料の環境中への過剰供給の痕跡が窒素安定同位体比の増加として1953年の層から検出された。窒素同位体比の変化は、過去25億年間で最大規模とされる地球の窒素循環の変化を捉えている。生態系もこれまで類を見ない変化がこの時期よりみられる。赤潮形成種を食べる渦鞭毛藻類の遺骸の増加や、色素分析から海洋植物プランクトン群集の大きな変化が捉えられ、沿岸海洋生態系の劣化が始まったことを示唆している。その他の指標を含めると、1953年を境に人為影響の痕跡が急増することがわかった。これは、歴史上のGDPなどの人類活動のさまざまな指標の加速する時期と一致する。
人新世とは、人類が地球に新たな地質時代を形成しているのか、、という議論の始まりですが、近年の四季の著しい変化、海の温暖化により海流の変化など、、生活実感が変わった今、他生物への影響を最小限にしていく人間の生産の変革が急がれる。