2022.10.16 国営飛鳥歴史公園 四神の館で上演『星詠み人〜アサギマダラと天文図』。
「観象授時」の思想が反映された天文
天文図は日本に渡ってきた僧侶(学者)によって伝わりました。中国古来の思想に「観象授時(かんしょうじゅじ)」という政治思想があります。それは「支配者たる皇帝は天文現象に現れる天帝の意志を見てまつりごとを行う」というもの。聖武天皇は明確に観象授時の達成を図るために占星台を興し天文現象を記録させたのではないかと考えられます。(参考資料「キトラ古墳と天の科学」より 中村士氏 論説)
また、キトラ古墳の天文図に残されているように、星は中心にある星々が皇帝(君主)に近い星であり、外に広がるに従って、君主に仕える星々の名前となっています。
つまり、天体に皇帝の相関図が描かれているとも言えます。
当時の朝廷の歌詠であった柿本人麻呂の和歌に、こんな歌があります。
大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも
皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為流鴨
<よみ>
大君(おほきみ)は
神にしませば
天雲(あまぐも)の
雷(いかづち)の上に
廬(いほ)りせるかも
<私訳>
大君は 地を司り天象も司る神でおられるので 雷の上に仮の庵もお住まいでいらっしゃる。
・現在の明日香村にも「雷丘」という地名があり、小高い丘になっています。
天文現象を表す言葉についた地名を思うと、天をも支配している大君の姿が浮かび上がるようです。
天文知識や情報は内密に、さもなければ罪となる。
天文現象には天帝の意志が表れているのであるから、天の示す姿は、政の予兆や君主の身に何かが起こることの反映ともみなされた。(参考資料「キトラ古墳と天の科学」より 石橋茂登氏 論説)
当時の法令(大宝律令・養老律令)の「僧尼令」には、僧や尼が天文現象を観察して占うことは罪であると明記。また、同じく「職制律」には、天文観測器具、書物、式盤を個人所有してはならないと明記。さらに、「雑令8」には天文生が占書を読んだり天を仰ぎ見て観察したことを漏らすのは禁ずる。と明記されている。
今回の『星詠み人〜アサギマダラと天文図』では、天文の学生、天文生が気候の変動を外部に漏らすことをしてしまいます。それが物語のキーとなっています。

