うちは情なか。箸も握れん、茶碗もかかえられん、口もがくがく震えのくる。付添いさんが食べさしてくられすが、そりゃ大ごとばい、三度三度のことに、せっかく口に入れてもらうても飯粒は飛び出す、汁はこぼす。
石牟礼道子『苦海浄土』
代表作「苦海浄土」(くかいじょうど)
1969年に出版された書籍。水俣の不知火海に排出された汚染物質により自然や人間が破壊し尽くされてゆく姿、被害者である漁民たちの運動や患者たちの苦悩・希望を克明に描いた作品。
人間とは何かを深く問う、戦後日本文学を代表する傑作。全三部。完結まで四十年以上の歳月をかけて書かれた。
第一部が出版された1969年の日本は高度経済成長の只中で水俣病のことは知られていなかったために告発の書でもあった。しかし、ジャーナリズムの側面だけでなく、命、尊厳に向き合い、声なきものへ寄り添い言葉を紡ぎ、極限状況にあっても輝きを失わない人間の、生命の希望を示す。
・水俣病(みなまたびょう)
1956年に公式発見された。体内に入った有機水銀により脳や神経が侵される有機水銀中毒。熊本県の不知火海に排出された汚染物質を魚が吸収し、その魚を食べた漁民たちが患った。戦後の最大の公害病のひとつ。
その後、汚染された魚たちや、ヘドロはコンクリート詰めにして東京ドーム12個分の広さの廃棄場に埋められた。現在は汚染濃度は規制値以下に下がっている。
参照:熊本地震で“水俣病再来”の危機(2016.5.23 AERA)
石牟礼道子作『緑亜紀の蝶』出演 2020年3月11日(火)
於:銕仙会能楽研修所
いのちは生まれて死に再び生まれて繋がる 祝言と鎮魂の連鎖
鎮魂のなかに祝言が孕まれ 祝言のなかに鎮魂が兆す
いのちの源に遡り いのちの再生を願う音楽詩劇の上演
