草の道を切ってはならぬ 水の道を切ってはならぬ
『衣』より
一人芝居『衣』 作・出演:なかええみ
上演:2019.3.30-31
<あらすじ>
戦の場で山を焼き、血なまぐさい争いの中にいた男。山に立ち上る煙が、雷雲を起こす。草木燃え、降り注ぐ雨の中、男は倒れる。
その後、男は、草木、地、風、諸共から声を聞き、苦しむ。その声から逃げるように、男は音を失い、目も見えなくなる。
下男のふとじと共に、田舎の集落に身を寄せる。身を寄せた家屋の庭に一本の桑の木があり、その木の下に衣が落ちていた。その衣には草木の香りが立ち込めていた。男はその衣を身にまとい眠った。泥のように眠り、病を回復する。「この衣は一体誰が置いたのか?」気づくと、明日は彼を慕い亡くなった女性(草の方)の命日。
その時に、男は草の方の言葉をまざまざと思い出し、「これは草の方の衣だ」と気づく。草の方は、草の効能を知り、遠くまで馬に乗っては草を採りに行っていた。衣には草、土の効能が服用されていたのだ。
「なぜ、私を助けたのか!・・・ 草の方は己の浅ましさを知っているのに!」
草の方の真意は?
男は問い続けられる。男は戦の場に戻ることを辞め、ふとじと共に、その集落で暮らすことを決める。共に汗を流し、米を育て、藁を編み、生活用具も作る。
満月の夜、皆と疲れて原で寝ている時に、また暗闇に襲われる。しかし、キラキラと粉の光が空を舞う…「草の方だ!」。草の方が蝶となり、現れた。
夢か現か、定かでない中で、二人は舞い踊る。
そろそろ、朝になる。草の方は、男は言う。 「草木土砂、風、水を弔いましょう・・・人の戦によりて、草木、有象無象の命も互いに傷ついた。全ての命を弔おう・・そして、あなたが帰ってきたいと思う世にしたい」
朝になる前に、蝶は空に消える。幻のできごとか? 心患いの幻想か?
いや、確かなものとしてここに残っているもの、それを頼りに男は生きていく。
自然と人をテーマに活動している なかええみの新作(2018初演)。
西日本豪雨の広島に取材し書かれた作品。
実際に水害被害を受けた衣(岡山の薬効手染め あるでばらん)を着用。

<創作ノート 一部>
2017.6.28~7.8 西日本を集中豪雨が襲う。(西日本豪雨)
この豪雨により、西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が200人を超える甚大な災害となった。また、全国で上水道や通信といったライフラインに被害が及んだほか、交通障害が広域的に発生した。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超え、平成最悪の水害。心的外傷後ストレス障害も報告されている。
2017.9.16 広島・呉に赴く。町を歩き生活の場を一変した水の勢い、雨の凄まじさを思いました。様々な場所でそこに暮らす人の声を聞きました。また、山の風景を見ていた時に、劇中「草の道を切ってはならぬ 水の道を切ってはならぬ」というセリフが聞こえてきたように思いました。

呉では、その日、電車が開通した2日目だった。にも関わらず、線路の脇にある原爆慰霊碑の周りは清められていました。災害から1ヶ月後の8月6日の式典をきちんと執り行ったと聞きました。

そのまま、広島市まで足を伸ばし、原爆ドームへ。不毛の地になると言われた広島の地に青々と緑が生えていた。その地でも多くに人に声を聞かせていただいた。心傷む言葉や思いの中にあって、
青々とした緑に救われた。自然の脅威、人の脅威、人の思い、自然の癒し、、祈りを考える旅だった。

